効果的なABテスト
ABテストというWebマーケティングの手法がある。これは売りたい商品に対し、AとBとCという3つの広告原稿を作って出稿し、どの広告が一番成果が出たかを見て正解を決めるというものだ。これをマーケティングの基礎知識がない人がやると、「A、B、CでテストをしたらAが一番良かったのでAが正解」とあまりに単純に判断してしまうケースが多い。とりあえず思いつきのA、B、Cという選択肢を作って、その中から正解を決めるというABテストをしているケースが多いのだ。このようなABテストは単なるAとBの比較でしかなく、両方ともダメな場合はどちらがマシかを教えてくれるだけである。
ABテストを正しく行う方法
「何を言うか?」のレイヤーでABテストをする方法
ある「フリース」の広告のキャッチコピーをABテストするとしよう。この商品には「軽い」という特徴と「暖かい」という特徴があるとした場合、どちらを全面に出したほうがよりクリックされるかを計測する。
このフリースは着ていることを忘れさせる軽さ
VS
このフリースは季節を勘違いしてしまうほどの暖かさ
注意事項として、これは「どう言うか(表現方法)」のABテストではなく「何を言うか(コンセプト)」のABテストである。そのため、ここで表現方法が秀逸すぎると、コンセプトはAのほうが良いのだが、表現が良すぎてBのほうがクリックされるということも起こり得る。よって、テストする3〜5個のネタの表現のレベル感を合わせておくことが必須だ。そして「何を言うか」のABテストの時は、商品、ユーザー、競合のことを徹底的に調べ上げて、最初に100のネタをピックアップする。その100のネタの中で厳選した3〜5個のネタでABテストをするのである。ABテストの結果、3〜5個のネタの中に基準値を超える成果を出せているものがあればそれを正解とし、なければ残りの95〜97個のネタの中から再度3〜5個を厳選してABテストを行う。間違っても適当に考えて思いついた、たった3〜5個のネタでいきなりABテストをして、その中で一番数値がマシだったものを正解にしてはならない。「何を言うか」を決めるということはその商品のコンセプトを決めるのと同義だ。
「どう言うか?」のレイヤーでABテストをする方法
前述の「何を言うか」のABテストで「軽い」という特徴のほうが支持されたとした場合、次にこのフリースの「軽さ」をアピールするために、どのような表現がよりクリックされるのかを計測する。
VS
このフリースは奇跡の200g、スマホ1個分の軽さ
これも2〜3個作ってどれが良いかいきなり広告を出すのではなく、せめて10個くらいは作って自信のあるものから出していくべきである。ABテストにはお金がかかることを忘れてはいけない。テストをやればやるほど、その結果から得られるリターンは高くなければ割に合わない。たとえ3回、4回とコストをかけてABテストを繰り返し、それで得た正解のクリエイティブだとしても、あっという間に疲弊する可能性がある。今のように広告の疲弊が早い時代においては、いかに最少回数のABテストで正解にたどり着くかがクリエイターのスキル差に直結する。
世界で最も有名なABテスト
1時間で約60億円の効果を出したと言われている、元アメリカ大統領のバラク・オバマ氏が実践したABテストを紹介したい。このテストは「何を言うか?」のレイヤーのテストである。オバマ氏はネット上でボランティアの選挙スタッフを集める際に、下記の図のようにいくつかのメインビジュアルを用意し、アクセスしたユーザーに対してランダムに出し分けるABテストすることによって、支援者のメールアドレスを最も効率的に集められるパターンがどれかを検証した。
この際に、「どれが良いかわからないからユーザに選んでもらう」ではなく、「複数の仮説を立てて、どの仮説が最も正解に近いかを判断する」という支店でクリエイティブを作成した。具体的に、下記の仮説を立てた。
- 仮説1
- 仮説2
- 仮説3
- 仮説4
大統領に望むものは「愛情の深さ」。だからAの家族と仲睦まじいオバマファミリーの写真が良い?
大統領に望むものは「リーダーシップ」。だからBの戦うリーダー像をイメージさせるオバマ氏1人の写真を使うべき?
新しい政治に望むことは「自分たち(有権者)の声が届く」こと。だからCの「GET INVOLVED(参加しよう)」というキャッチコピーが良い?
新しい政治に望むことは「今までの様々な不満から変わる」こと。だから「CHANGE(変革)」というキャッチコピーが良い?
最終的には、Aの「オバマ氏と家族」のビジュアルと「CHANGE(変革)」のコピーが一番クリックされた。仮説を立てていないと、ただ単に「子どもが写っている写真はクリックされやすい!」、「キャッチコピーは1単語のほうがウケる!」といったトンチンカンな解釈になる。本当に「アメリカ国民は大統領に対して『愛情』を、そして政治には『変革』を求めている」からクリックされたのかどうか?これはこの時点では明確にはわからないが、同様のことを繰り返していくことで仮説が確信に変わっていき、「バナーはどんな写真がいいか?」という低次元の話から「大統領選はどのように戦うべきか」という高次元のノウハウを得ていくことができる。
究極のSEO
SEO対策の重要性についてはWEBマーケター界隈で常に囁かれているトピックである。検索アルゴリズムに穴をついて不正に検索順位を上昇させる"テクニカルSEO"は短命であり非効率であると述べている。Google検索は「良い情報、良い商品を上位表示させたい」という変わらないコンセプトがある。そうであれば、自らが良い情報、良い商品を提供することが究極のSEOだと言う。
テクニカル運用
デジタルマーケターとWEBマーケターの違いを以下のように説明している。
- デジタルマーケター
- WEBマーケター
データから傾向を見て、直接配信設定を調整する人
データから傾向を見て、人間行動の仮説を立てて、施策の手を打つ人
テクニカル運用をするためには、データの読解力を身につけることが必須である。データ分析により、何かの傾向が掴めたときは、顧客がなぜそのような行動を取ったのかという「要因」を調べることが重要。調べる方法は、顧客への定量調査の"データ"ではなく、顧客の行動を直接観察する、または顧客に直接聞く定性調査の方が効果的である。