デジタル化の真の意味とは何か?
リアル世界がデジタル世界に包含されることで、世界で何が起こっているのか?
書籍『アフターデジタル - オフラインのない時代に生き残る』では、デジタルで企業が常に顧客とつながり現実世界の行動をリアルタイムでデータ化できるという世界の常識を、中国の事例を用いて鮮やかに描き出しています。
昨今、色々なところで叫ばれているDX(デジタルトランスフォーメーション)の本当のあるべき姿について語られています。
DXを単なるオフラインからオンラインという軸で考えてはいけない。オフライン既定の考え方に洗脳されてしまっている人々へ警鐘を鳴らしています。
デジタル化の先に何があるのか、私たちのイメージを超えた世界がそこには広がっています。
アフターデジタルの世界
この書籍では、私たちのイメージを凌駕するアフターデジタルの世界を、中国の事例を中心に紹介しています。
中国では、QRコード決済が当たり前、ほぼ現金が使えなくなり、なんと路上の生活者の物乞いも神社のお賽銭もQRコード化しています。
シェアリング自転車やカーシェアの浸透により、移動データもトラッキングできるようになりました。
中国では、『ジーマクレジット』という様々な行動情報や属性情報を基にした1人別のスコアが普及しています。
街の至る所に監視カメラが設置されているため、行動もスコアに反映されます。
スコアが高い人は、サービスを受けるときにデポジットがいらなかったり融資を簡単に受けられるようになります。
このスコアが生活をする上でのステータスになっています。
「こんなスコアに管理されるなんて嫌だ」と不快だと思われるかもしれませんが、このスコアにより中国人の態度が良くなり急激におもてなし社会に変貌しつつあります。
このように、すべての顧客データは取得され活用される事態がもうすぐそこまで来ています。
そのデータをフル活用して、ユーザー体験を高めていくビジネスモデルが必要をされており、そうしたモデルを早く構築した企業が生き残ると考えられています。
顧客接点を拡大し、全ての行動をデータとして取得して、ユーザーエクスペリエンスを磨き込むことで大きな価値をユーザに還元し。さらに顧客接点を拡大していく。
これまではメーカー主導で、顧客接点側はヒエラルキーの低い位置にいました。
しかし、これからは顧客接点を多く持っているプラットフォーマーが強くなり、単に物を作っているだけのメーカーは接点のうちの1つとなる商品を提供するいわば下請けになってしまうであろう。
アフターデジタルにおけるオフラインの存在意義
続いて真のデジタル化とオフライン(リアル世界)の存在意義についてです。
実は、一般的にイメージされるデジタル化というのは、この本で述べている真のデジタル化である『アフターデジタル』ではない可能性があります。
日本で浸透してる、「オフラインが中心で、付加価値的な存在として新たなデジタル領域が広がっていく」という考え方には視点の転換が必要です。
これからはすべての行動がデジタルに接続されるようになり、オンラインとオフラインの境目なんてなくなっていきます。
デジタルの中の一部に貴重なリアルが存在するようになり、リアルの場所は密にコミュニケーションができるレアな設定になるのです。
「デジタル接点は当たり前、リアル接点は特別な体験ができる一部のレアな場所」と捉えることが大事です。
デジタルツールという言い方がありましたが、もはやリアルの方がツールになります。
O2O(=Online to Offline)ではなくOMO(=Online Merges with Offline)になるのです。
OMOという視点に立った時に大事なのは、「チャネル」という考えを取っ払い、全ての顧客設定でデータを取得し、そのデータをデジタルとリアルのユーザー体験UXにフィードバックして磨き込んでいき、そしてさらにそのデータをフィードバックするループを高速で回すこと。
リアルがレアな場と捉えられるようになると、数少ないリアルという接点をいかに生かすかという視点になります。
リアルでは徹底的なホスピタリティが大事になってきます。
様々なデータを取得し、それを生かすことでユーザに寄り添った体験提供がリアル上でできるようになります。
アフターデジタルの世界における日本の勝ち筋
それでは、そんなアフターデジタルの世界を実現するためには日本はどうすれば良いのでしょうか。
日本の勝ち筋と日本企業が変わるために必要なことは何か?
日本は海外に比べて圧倒的にデジタル化が遅れています。
そんな日本にはもう他国に勝てる見込みはないのでしょうか?
日本はどうしても『ビフォアデジタル』の視点で考えてしまいがちなのですが、『アフターデジタル』の視点を持てば非常に強い国だと言えます。
皆さんもご存知の通り、日本はコンテンツやキャラクターのIP(=Intellectual Property)を厳選としたコミュニティ形成が強い国です。
漫画やゲームの文化とそれを起点とするコミュニティ形成、そして日本国民の芯にあるホスピタリティの精神、それらは他の国にない武器になるでしょう。
IDを軸としたデータ統合が当たり前になり、データを元にしたUXの磨き込みが行われるとある意味、すべての体験が最適な地点へと収束して画一化していきます。
そんな世界で価値を発揮するのがIPによる文化情勢だったり、おもてなしの体験なのです。
最適化と効率化を徹底的に行ったアフターデジタルの世界で日本の強みを発揮することができれば、日本は躍進することができるかもしれません。
ただ、日本の強みを生かすためにビフォアデジタルの考え方からドラスティックにアフターデジタルへの革新を起こさないといけません。
日本企業がアフターデジタルに変わるためにはどうすれば良いのでしょうか?
デジタルトランスフォーメーションを推し進めようとするとどうしてもトップダウンで強引に実行しないと変わらないというイメージを持つかもしれませんが、日本ではそのような強引なトップダウンはうまくいきません。
トップダウンで実行しても現場からの抵抗によってうまく変革することができず、そのまま数年経ち「結局何も変わらなかった」という烙印をされて終わってしまうのです。
本当の意味でのデジタルトランスフォーメーションを推し進めるためには、トッププレイヤーと現場レイヤーが同じアフターデジタルの世界をイメージして共有しつつ現場レイヤーから少しずつ成功体験を積み上げて、雪だるま式の大きなムーブメントにしていく
こちらの書籍では、データサイエンティスト、UXデザイナー、エンジニア、それぞれのチームでスモールにクイックにグロースさせていくことが大事だとと言います。
デジタルを主軸とした効率化とユーザー体験の磨き込み、そしてそんな世界でレアな場として提供されるリアル接点での徹底的な体験提供、それがこれからのアフターデジタルの世界を勝ち抜くモデルなのです。
まずは、ビフォアデジタルからアフターデジタルへの思考の転換を行いましょう。
リアル起点から考えるのではなく、デジタル基底でどのようにリアルを生かすかを考えられるようになりましょう。
リアルはデジタルに包含された一部の接点なのです。
- 顧客設定を拡大し、すべての行動をデータとして取得してユーザーエクスペリエンスを磨き込むこと。
- リアル設定はレアな場になっていく、徹底的なホスピタリティが大切。
- 日本企業が変化するためには、現場レイヤーから少しずつ成功体験を積み上げて雪だるま式に大きなムーブメントにしていくこと。
本書がフィットした方は、続編である『アフターデジタル2 UXと自由』、新刊『ジャーニーシフト デジタル社会を生き抜く前提条件』もご覧いただくと、理解がさらに深まりそうです。