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「Rakuten Link AI」の使い心地を試す――「Rakuten Link」の機能拡充もあわせて発表、その狙いは?


新サービスの「Rakuten Link AI」は、はたしてどういった使い心地なのか。

スマートフォンでの体験をご紹介しつつ、あわせて代表取締役会長の三木谷浩史氏が語ったAIサービスへの期待、そして「Rakuten Link」がなぜ通話・メッセージだけではなく、幅広い機能を備えることになるのか、楽天のキーパーソンが語った狙いをお伝えする。

生成AIがもたらす未来

[暮らしを変える。社会を変える。Rakuten AIが未来を変える。]


冒頭に登壇した三木谷氏が語ったのは、生成AIが社会にもたらすインパクトの大きさ。

800万回線に達し、MNPでは他社よりも転入数が多いとして、楽天モバイル自身の好調さを支える要因に「完全仮想化とその背後にあるAI」を挙げた同氏は、「生成AIが世の中を変えようとしている」と語る。

これまで人が手掛けてきたさまざまな作業を、AIが代替するようになる、あるいはAIが人を支えるようになる。動画を自動生成したり、アイデアを出してくれたりすることで、人々の生活が変化する。

そんな状況を三木谷氏は「今、人類は、歴史的な転換点にある」と表現し、「AIの民主化を進めたい」と意気込みを見せ、楽天ならではのあり方として「楽天のサービスとAIの連携」を挙げる。今後、法人向けを含め、さらに利便性を高める施策を展開する考えだ。

AIチャット「Rakuten Link AI」

「Rakuten Link AI」は、Rakuten Linkから使えるAIチャットサービス。自然な文章でニュースや天気を聞いたり、「今日の献立」のようなアイデアを考えてもらったりできる。なお、Rakuten Linkのデスクトップ版からは利用できない。

その仕組みは、今回、詳細まで明らかにされておらず、楽天側は最適なLLMを活用するといった姿勢だ。そのため、生成AIの性能で語られがちなベンチマークスコアや、LLMのモデルなどは発表されていない。ただし、圏外では使えないとのことで、基本的にはクラウドで処理されている。

利用するには、Rakuten Linkにある「AI」と記された吹き出しのアイコンをタップするだけ。今回の体験では、アプリ起動直後、画面の一番上に表示されていたほか、アプリの表示内容を下にスクロールしていくと「AI」アイコンが配置されていた。

入力はテキストだけ受け付けるかたち。画像や動画をアップロードすることはできない。音声で入力したい場合、「Rakuten Link AI」ではなく、スマートフォンの文字入力で選べる音声入力機能を用いる。

今回いくつか試した筆者による質問と、Rakuten Link AIによる回答を見てみよう。

たとえば「楽天モバイルのメリットとデメリットは?」と質問すると、「シンプルな料金プラン」「国内通話無料」などをメリットと挙げる一方、デメリットに「エリア」「サポート体制」「端末の選択肢」を挙げた。

また、三木谷氏へのインタビュー用の質問を考えてもらうと「設立当初のビジョン」という項目を挙げる。「無難だが、良い答えを引き出すのが難しそうだな」と感じた筆者だが、その次の質問案が「Open RAN技術の導入について」といったもので、楽天モバイルや三木谷氏が示してきた方針が取り入れられた内容と思えるものだった。

では、どこまで最新の情報を得られるのか。「昨日のニュースを3つ程度教えて」「本日のワールドシリーズの結果は?」「トヨタの最新ニュースを教えて」といった問いを投げかけると、いずれも最新に近い結果を示してくれた。楽天モバイルユーザー向けとはいえ、無料で使えるサービスとして、日々のちょっとした検索に使いたくなる仕上がると感じさせるものだ。

 

Rakuten Linkが楽天エコシステムの中心に

楽天グループが開発を進めるAIによる新たなユーザー体験として提供される「Rakuten Link AI」は、単体のアプリではなく、「Rakuten Link」の機能のひとつとして登場する。

つまり「Rakuten Link」そのものの価値を高め、ユーザーにもっと使ってもらえるようにするための機能と言える。アプリのアイコンも、通話を示す受話器のイラストがなくなり、楽天のシンボルマークを用いるものになった。

今回の「Rakuten Link」機能拡充では、先述したRakuten Link AIのほか、楽天モバイルの利用料などを確認できる機能、楽天ポイントが貯まる限定特典へのアクセスなどが追加された。

楽天グループ マーケティングディビジョン エコシステム戦略統括部執行役員ディレクターの渡邊昌資氏は、こうした機能拡充により「Rakuten Link」を楽天エコシステムの中心となるアプリになると説明。つまり、楽天の各種サービスやポイントなどで形成される経済圏のハブとなる存在が「Rakuten Link」ということになる。ちなみに、渡邊氏は、コミュニケーションアプリとしての使いやすさなど、ユーザーインターフェイスの改善はユーザーの声などを踏まえて、今後も取り組んでいくと説明する。

楽天グループのAI戦略をリードする楽天グループ チーフAI&データオフィサーのティン・ツァイ氏は、楽天自身がECモール、フィンテック、完全仮想化によるモバイル事業を経て、現在は生成AIの将来性を確信していると語る。

たとえば登場時点での「Rakuten Link AI」は、楽天モバイルというキャリアが提供し、同社回線のユーザー向けとなっているが、契約者情報など個人情報は用いられていない。

今回の発表は、単なるAIチャットの登場、それも楽天モバイルだけの取り組みという枠に留まらない。楽天グループ全体でAIを推進し、コミュニケーションアプリとして無料通話などで魅力を訴求してきた「Rakuten Link」にAIを組み込んだ。これにより、楽天グループの各サービスの入口としての役割を担い、「楽天エコシステムの中心アプリ」への進化を目指すことになる。競合の携帯各社に先んじて、AIの活用によってエコシステム・経済圏の利用をさらに進める仕掛けの第一歩と言えそうだ。

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