デジタルの分野は技術やノウハウの変化が激しく、多くのインプットとアプトプットが要求される業界と言える。プロジェクトマネジメントにおいても様々な立場の人物が登場し、管理する領域も極めて広い。そのような状況の中で、広い視野で全体像を把握し、具体的な指示・実行、レポートを的確にやり遂げるためには、地頭が良いとが必須条件となる。
地頭は先天的なもので決まり、後天的にはどうにもならないと思われているが、書籍『賢さをつくる 頭はよくなる。よくなりたければ。』では、「頭を良くすることは可能」とはっきりと述べている。
「頭の良さ」の定義
『頭の良さ』の構成要素は次の3つ。
- 「具体」と「抽象」の距離が長い
- 「具体化」と「抽象化」のスピードが速い
- 「具体化」と「抽象化」の回数が多い
「具体」と「抽象」の距離が長い
キリスト教の聖書には「右の頬を打たれたら、左の頬も差し出しなさい」という言葉がある。正直、意味不明だ。しかし、抽象度を上げて考えると「神の愛を体現しなさい。」ということ。距離を長くとるほど、幅広く深い選択肢を考え出すことができる。
「具体化」と「抽象化」のスピードが速い
頭の回転が速い人は、具体的な質問に対して、短い時間の中でも本質や全体を考えてから返答している。これは、言うのは簡単であるが、実行するのはとても難しい。
「具体化」と「抽象化」の回数が多い
頭の良い人は、たくさん間違いにぶつかった経験から正解がわかる。思考から出てきた理論は仮説に過ぎないため、検証する必要がある。距離、スピートとともに大切なのが回数。
距離・スピート・回数の3つは自分の特徴を考慮して、うまく組み合わせることで、最大限のパフォーマンスを発揮できる。
具体と抽象を行き来する
具体と抽象を自由に移動できる人が「頭のいい人」であり、この行為が「思考」である。
企業の新卒採用でなぜ学歴が重視されるのか?「確率的に高学歴者の方がハズレが少ない。」という見方が強い。この現象をもう少し厳密に解明してみると、学校の勉強では、基本的にインプット力、つまり抽象化への思考力が要求される。
抽象化への思考力とは、本質を探り、体系化し、全体を理解する力である。学校での成績優秀者というのは、事柄を抽象化する訓練を受けてきた人とも言える。高学歴者は自動的に抽象の世界で考えてしまう人が多い。
抽象的な仕事を担当させる管理職に誰を任命しようか……という段階になると、抽象的な思考に慣れた高学歴のほうが、仕事ができるように見えてくるのだ。
実際のところ、学力や学歴と仕事は関係なくて、「仕事に合った抽象度で思考ができるのか」が重要になってくる。いまさら学歴を変えることは難しい人でも、思考を変えることはいますぐにできる。
思考(特に、抽象化力)を鍛える方法として、中学、高校の数学を学び直してみることを推奨している。理由は、中学から高校にかけての数学の問題のほとんどは、抽象化と具体化をくり返すことによって解けるためだ。必ず、いままで知らなかった「抽象」の世界に出会えるはず。
頭を良くする思考方法
頭を良くするためには、次の3種類の質問をして、階層構造の図を広げる必要がある。
抽象化するための質問
- なぜ?
- 要するに?
- つまり?
- まとめると?
- 本当は?
- 目的は?
- そもそも?
具体化するための質問
仕事をする上で、ステークホルダーからの抽象的な要望や指示を具体化して実行することが、「頭の良い」人材である。
- いつ(When)
- どこで(Where)
- 誰が(Who)
- 何を(What)
- どのように(How)
- たとえば?
- TPO(Time、Place、Occasion)
同じ抽象度で階層を広めるための質問
いままで考えていなかった事柄について思考をするためには、下記の質問をするといい。
- 他には?
- 大切なのは「具体」と「抽象」の往復運動である。
- 思考は、抽象化だけでは完結しない。具体化されて初めて価値が世界に現れる。
- 抽象的な難しいことだけを語っている人は、具体的なことしか興味がない人と同じくらい「頭が悪い」と言える。
- 「具体」と「抽象」の間のなるべく長い距離を、素早く、何回も移動することが頭の良い思考であり、それは、意識すれば誰にでもできること。
- 知性とは、目の前の現実から理想とする自分や社会を描き出す力であり、その理想を現実化する方法を探す力ことでもある。